あやしい店

風俗店の経営者というと危ない人、というイメージではあるけれど、その元締は別として、そこで働いている店長や店員は、本当に優しい人ばかりだった。
しかしやはり怖い人もいる。
最初に面接に行った時、なにか違和感はあった。この陰湿さはなんだろう、と。
面接→即採用→即講習ということが多く、途中で帰りたいと言えない私は、嫌な空気を感じつつも店長と講習をすることになった。目の色がドロっとしているのにとても鋭く、そのわりには物腰は柔らかかったりして、かえってそのギャップが怖かった。講習はこれまで何度か受けたことがあったけれど、相手が射精をしたのは初めてだった。普通はお仕事なので射精はしない。風俗業のプロとして、その一線は超えてはならないという暗黙の了解があった。
だからその社長が射精をした時、やっぱりおかしい…ここでは働きたくない…と強く思った。
受付が女性というのも初めてだった。講習後、場末のホステスみたいなその女性に「社長、イッてた?」と聞かれた。「ハイ…」と答えると、とても嫌な顔をして「ふーん」と言った。
多分社長と付き合ってるのだろうな…と思い、ますます働きたくなかった。すぐ逃げたかったけど、後腐れがあると嫌なので、何日か働いてから体の調子が悪いと言って辞めた。
それから数年経ち、どさんこワイドをみていたら、素人のクイズコーナーにその受付の女性が出ており、オイオイ…とずっこけてしまった。