抜けられない理由

私はたくさんの仕事をしていた。何をやっても長続きしなかったけれど、何もやっていないという時期はなかった。
普通の仕事と風俗とをいつも行き来していた。更生したい、といつも強く思っていたけれどなかなか風俗から完全に抜けることができなかった。
風俗店というのは、どこに行っても本当に親身になってくれる。ただ働くだけではなく、今後の生活のことを一緒に考えてくれるというのが普通だった。
いくら貯めたいのか、どれくらい働くつもりか、住む場所はあるのか、借金はあるのか、悪い人に騙されてはいないか…などなど。こういうことはだいたい店の人が解決してくれて、これからの道すじをつけてくれるのであった。働いている時もいつも目を光らせ、問題を抱えていないか、と心配してくれる。
これは、風俗店で働く人は問題を抱えている人ばかりなので、安定した経営をするためには必要なことだったのだと思うけれど
私はこの風俗業界のあたたかさにとても救われていた。店のいうことを守っていれば、良い方向に進むような気持ちでいた。無断で辞めて、そのあとノコノコ戻ったとしても、「よく戻ってきたね」と笑顔で優しく迎え入れてくれるのだった。風俗店の広告には「○○ちゃん復活!」という文字をよく見かけるが、それはこういうシステムのせいで、非常に出戻りが多いからなのだ。