松居一代考

傷付いた分だけ人には優しくできるものだとよく言いますが、世にいるダメ男が大好きな女性の、愛する男に対する自己犠牲の精神は群を抜いていると思います。
ダメ男にいくら傷付けられても、彼が自分を傷付けるのは自分に問題があるからと反省し、もっと優しくしたい、もっと尽くそう…いう思考で生きています。

そうして傷付いて傷付いて…尽くしても報われず裏切られ、それでも尽くして…という事を繰り返してきた女性は、森羅万象を知ったかのような達観した菩薩のような眼力を持つようになると感じます。その瞳は慈愛に満ちていて、とても優しく、人を包み込むような力を持っているようにわたしには思えるのです。

それを感じるのが松居一代なんですけど、他にも安藤和津朝丘雪路など遊び人の夫を持つ熟女はその雰囲気をまとっていると感じます。だめんず好きのわたしにとっては、その苦しみを乗り超えた場所にいる熟女の方々がとても眩しく、憧れの存在になっていたのです。

ですから松居一代の言動を見ていて、とても複雑な心境になりました。あの優しい眼差しは消え、完全に狂人の眼になってしまった。

ですが、松居一代は様々な分野で才能を発揮させ莫大な資産を築いた成功者であることに間違いなく、そこに至るためには凄まじい苦労はもちろんあったのでしょうが、それは松居一代の、何に対しも病的なほどにがむしゃらに取り組んでしまうまじめな性格が影響していると思われ、ですから対象の男に対しても同じように強烈に愛し過ぎてしまっただけであって、それが仏のような達観した境地に至るか、狂気的な境地に至るかは紙一重なのかも知れません。