中3の頃③

テレビを観ていて、何となく気になる人がいた。日曜日にやっていた笑っていいとも増刊号で人生相談のコーナーの回答者をやっている人だった。派手なロックミュージシャンのようだけれど、その姿とは裏腹にとても口調が優しくて人生相談に対する答えも独特だった。
この人、おもしろいなぁ…と思い
笑っていいとも増刊号を楽しみにして見るようになった。
そして、他の番組にも出ていないかと新聞をチェックするようになった。ラジオ欄に「大槻ケンヂオールナイトニッポン」と書いてあるのを見つけ、その日のうちにイヤホンを買いに行き、夜中のラジオに備えた。

大槻ケンヂオールナイトニッポンは本当に面白かった。彼が筋肉少女帯というバンドをやっているということもそのラジオ番組で知った。ラジオで筋肉少女帯の曲がいつもかかっていて、私はその曲調、声、歌詞に強烈に魅了された。

その頃は振り返ってみても、私にとって苦しい時代だった。だからこそ、ここまで夢中になったのだと思う。
嫌なことがあっても筋少の曲をヘッドホンをつけて大音量で聴くと忘れられた。
それまでは何もすがるものがなくて不安定だったけれど、大槻さんの思想が私の精神を強くした。
本屋に行ってロック雑誌を端から端まで立ち読みし、彼の愛読書も片っ端から読んだ。大槻さんは物凄く読書家で、文学から詩集までありとあらゆる本を読んでおり、それは私の世界を大きく拡げてくれた。写経のごとく、筋少の歌詞を書き連ねる。ラジオもカセットテープに録音して何度も聴き直す。CDも擦り切れるほど聴いた。
何もかも忘れて、没頭できた。
地獄から私を救ってくれたのは、大槻さんと筋少だった。