だいちゃん

だいちゃんという人と1年くらい交際していた。だいちゃんというのは偽名だったのだけど、それがわかってからも私は偽名で呼び続けた。
だいちゃんは、えみちゃんのセフレだったんだけど「多分タイプだと思うよ?」と言われたのと、聞いたらすごい近所だったので直接家に行ってみた。
身長が2m近くもあって、スポーツの専門学校に通っている人だった。
ピンポーンと鳴らして、えみちゃんの友だちです…と言って、10分後にはセックスしていた。
だいちゃんは「テレビないなら見せてあげるから毎日おいでよ」と言い
私も「わかった」と言い、そのまま住みつくようになった。
だいちゃんは物凄くギャンブルが好きで、学生のくせに毎日パチンコをしていた。私の財布から勝手にお金を抜いてシレっとしていることも何度もあった。
学校も休みがちでパチンコばかりしていたし、バイトというものを一切していなかった。
こいつすねかじりだしクズだし頭も悪すぎるなぁ…という気持ちが強かったけれど、私はなぜだかとてもだいちゃんが好きだった。だいちゃんは私のことを「こんなに人を好きになったことない」といつも言ってくれていた。その前に付き合っていたゆうじくんは、私に戸惑うばかりだったけど
だいちゃんはいつも私を好きでいてくれた。私はたまに下手くそな4コママンガを描いていたのだけど、だいちゃんはそれを読んでは腹をかかえて笑い「もっと読みたいから早く描いて」と言っていた。そんなふうに思われることは私にとって、多分初めての経験だったと思う。誰かに愛されるって本当に幸福なことだった。(クズでも)
ある時、だいちゃんがやっていたスポーツの合宿があるとかで、数日家をあけることになり、だいちゃんが私に手紙を書いてくれた。
超へたくそな字で「ずっとずっと大好きだよ。おれがいない間に悪さしないでね」と書いてあった。
だいちゃんが合宿に行っている間、私は当たり前のように毎日テレクラに電話していたのだけど
だいちゃんは合宿先から夜中私に電話をかけていたらしい。何時間も話し中だったから、テレクラをやっていることがわかったみたいで、帰ってきてから怒り狂って壁に穴を開けていた。
その辺りから、だいちゃんは私に対して急速に気持ちが冷えていったみたいだった。
ちょうどだいちゃんもその頃から水商売を始めて、みるみる生活が荒れていった。同じ水商売の人と付き合い出したり、多分だけど薬もやっていた。
そして私はだいちゃんに振られてしまった。

別れてから何年かして、突然女の人から電話が来た。 
「○○って知ってるでしょ?」と言われ「わかりません」と答えたんだけど、よくよく聞いたらだいちゃんのことだった。偽名だったから、本名を聞いてもピンとこなかったのだ。
その女の人は、自分はだいちゃんと付き合っていたのだが、彼が交通事故で死んだ。部屋を片付けていたら手紙が出てきたので、どうしたらいいものかと思い電話をかけた、と言った。
突然死んだと言われ、かなり驚いたけど、手紙って例の「ずっと好きだよ」ってやつかぁ…どんな女に書いたのか知りたかったんだろーな、と私は思った。
そのあとだいちゃんの話を少ししたのだけど、内容的には「あの人、長所いっこもなかったよね」みたいな感じだった。
死んだ人にそりゃないだろって思うけど。
その女の人に「会おうよ」と言われたけど非常に強い危険を感じたので私は断った。

今だに、あの電話の真相がわからない。