汚点

結婚をして、出産したあと、私は生まれ変わったようになった。
自分にはもう役割がある、と確信したから。昔のような苦しみからは完全に解放されたし、2度とあのような目に合うことはない、と思った。
出産して3年ほど経った後、私は介護の仕事を始めた。その会社の社長は見た目が介護をやっている人とは思えないほど、なんというか、悪そうな人であった。年もまだ40歳前だったし、遊び人ふうだった。ところが実際はとてもまじめで熱血な仕事人間だった。元々は看護師として働いていたらしい。そのギャップがなんかいいなぁと思ったけど、私はその時は完全に更生していた為、おかしな気持ちになることはなかった。
ある日、社長と一緒に利用者さんを送り終え、帰り道に唐突に「釣りって好き?」と聞かれた。一応「おもしろそうですよね」と答えた。すると社長は「釣り教えてあげましょうか?夜は出られます?」と敬語で聞いてきた。
え…と思ったけど私は本当に素直な気持ちで、教えて貰ったら楽しいかもと思ってしまった。人がいいというかなんというか…いい年をしてまったくよくわかっていなかった。
そして社長と夜釣りに行き、そのまま草の上でセックスをした。そしてあろうことか、私は社長のことを好きになってしまった。セフレじゃない。もうれつに恋をしてしまった。
あれだけ若い頃に苦悩して、そして立ち直ったのに、こんなに簡単に崩れちゃうのかなぁ…と私は自分に失望した。あまりに中途半端で自分らしくないと思った。でももうどうすることもできず、私は社長とズルズルと浮気していた。ビッチ生活が長かったはずだけれど、これは浮気だと自覚したのは初めてだった。人生最大の汚点かもしれない。