コツ

風俗の仕事について、私はコツのようなものを掴んでいた。多分ほんとうに向いていたのだと思う。
大きく分けて、ソープ、ヘルス、ピンサロがあるが私はもっぱらヘルスで働いていた。
ソープは本番があるし、というか本番に抵抗があったわけではなく、よりプロっぽいイメージがあったので、何となくそこまで落ちたくはないというふうに考えていたのだと思う。
ピンサロについては、シャワーがなく客の局部をおしぼりで拭くだけなので汚くて嫌だった。えみちゃんはピンサロで働いていたがその理由は「手軽さ」を感じているためだったらしい。服も脱がなくていいし、触られたりは普通らしいがヘルスほど濃厚なサービスはなく、基本抜くことがメインで「ヘルスよりもラク」という感覚みたいだった。
ヘルスの基本サービスとは。
まず客が控え室にきたら、カメラで知り合いじゃないかどうか確認する。
そして客は嬢の部屋に入り、少しお話をする。エロトークをする客はあまりおらず、嬢の身の上話を聞きたがることが多い。ここでは「えっちが好きすぎて」などとあからさまな嘘は言わず、「体を売ると自己確立ができる」というようなことを私は言っていた。あまりにアホっぽいやつには「お金がほしいから」と答え、お金何に必要なの?と聞かれると「コンビニ経営したいから」と言っていた。そのように淡々とした会話をしたあと一緒にシャワーに入る。客の体をすみずみ洗う。このあと全身を舐めなければならないので、念入りに洗っておく。局部に異変がないか確かめ、最後に薬品を口に含んだまま、その場でフェラチオする。これはもし傷や病気があった場合、しみるので、その確認をするためなのだった。
シャワーを終えると、部屋に戻り、軽くイチャイチャを始める。客はたいてい最初は照れるので、こちらから少しのエロさを出し甘えてみたりもする。客がその気になってきたら仰向けにさせ、首すじから足のつま先まで舐めていく。全身リップというらしい。
その時に客が嬢の体を触りたいのであれば逆になってもいい。その辺は適当にやる。 
そして客を四つん這いにさせ、おしりの穴を舐める。これは菊リップといい、相当な抵抗があるのだけど店によると絶対に外せないサービスらしいのでがんばってやる。菊リップはない店もあるのだけど、そういう店は全般的にサービスが悪く雰囲気も悪い。私は何件かの店を渡り歩くうち、菊リップの有無をある意味、指針にしていた。菊リップのあるところは良いお店〜(やだけど)
再び仰向けにさせて、客の希望があればローションで素股などをする。素股とは股に客の局部を押しつけてこする、というサービスで、雰囲気としては騎乗位的なので好きな客が多い。しかし異常にぬるぬるしていて油断するとうっかり挿入されてしまうので細心の注意を払わなければならない。
そして最後はシックスナイン、というのが基本だけれど別にその場の雰囲気でやればいい。あまり慣れてる感を出さずに、あくまで素人ふうに、恥じらう恋人ふうにするのが最も一般受けするみたい。やっぱり一般的じゃない客もけっこういて、自分のオナニーをほおずえしながら見ていて欲しい、とか、時間いっぱい使って延々とおっぱいを舐め続けるだけ、とか、匂いを嗅ぎ続け嫌がる顔がみたい、とか、服も脱がずただ話したいだけ、とかいろんな人がいた。性癖は様々なので、決して驚いたりせず「それもありだね」という寛容な心で一緒に楽しんでやるのが、客の心を癒すのであります。
最後に再びシャワーを浴びて、終了。
私はこの仕事を誠心誠意を込めて、きっちりとやっていた。