転々とする

最初の店はすぐに辞めた。でも次の日には違う店に面接に行っていた。
そこは大きな老舗店で、完全個室でシャワーも部屋にひとつずつ付いていた。
社長と面接をして、すぐ講習となった。社長を客に見たてての講習。風俗業を志す人は、これが最大の難関というくらい嫌がる人が多いらしいのだけど、私は全然嫌ではなかった。いやらしさもなく、淡々と進められていく講習に、私は性サービスというのはこうあるべきだと思った。
その店は繁盛店だったので本当に忙しかった。1日17時から23時までで最高6本入る。内容によっても違うけれど日給が6万から7万なので、1週間で40万くらい稼げてしまった。
そして私はそこで、なぜか売れっ子になった。社長にも異常にかわいがられており、「この商売長いけど、短期間でこれだけ指名とったのは見たことがない」と言われた。何の仕事をしてもダメだった私が、初めてやりがいを感じたのが風俗っていうのが何とも…

でもその後私は店を7回くらい変えたり、一度辞めた店に戻ったり、風俗業界自体を辞めたりまた戻ったり…ということを繰り返していて、殆ど安定はしていなかった。
精神的な波がおおきすぎて、まともな生活はできていなかった。常にお金もなかったし、いつも生と死の狭間を彷徨っているようで、現実感がなかった。
いつ死んでもよかった。怖いものなんて何にもなかった。