呉服屋さん

呉服屋だという彼は40歳くらいだった。黒塗りの、高そうな車に乗っていて、見なりもきちんとしていて、お金持ちに見えた。
最初彼は「なんでこんなことやってんの?」と私に聞いた。「テレビ持ってないから欲しくて」と言ったらすごくそれがウケて、君はとても面白い人だね、と言った。
テレクラで何度も会うのは彼くらいだった。2回目に会った時、「テレビ買ったか?」と聞かれて「腕時計買った」と言うと
「なんだよそれ…」とすごくガッカリしていた。その後もテレビテレビとしつこく言われたけれど、本当は私はテレビなんて欲しくなかった。
彼は一度晩ご飯に誘ってくれた。いい服をきてこい、と言われ、いい服を持っていなかったわたしは、約束を破って行かなかった。それでもまた連絡してきて、おれの女なってくれとか何度も言っていたけど、そりゃ無理に決まってるでしょーが…と私は呆れていた。
体を売っていた人と恋人になんてなれるはずかない。